遠藤彰子という画家を私は最近まで知らなかった。教えてくれたのは雪梁舎フィレンツェ賞の表彰式で知り合った絵描きの友人で、私が女流画家協会展に出そうかなと言ったら、「さっちゃんの画風は女流に合ってるかもね」と言って、委員のお一人である遠藤彰子を教えてくれた。
検索したらご自身のホームページがあって、巨大なキャンバスの前で脚立に上がっている姿がカッコいいなと思った。
美大に行ってる息子から「デカい絵を描いた方がいい」と言われていたので、これから先に自分も脚立に上がって描くような絵描きになるために、遠藤彰子展に行くことにした。
しかも「物語る」。最近の私の頭の中で、物語のある絵を描きたいという思いがグツグツ煮えていたので、私にもってこいな展示ではないか。
そんな訳で、平塚という初めての場所に私は降り立った。
平塚市美術館は駅からバスで数分、周りを工場に囲まれた中に異世界のように現れる。
入場して初期の「楽園」シリーズから「街」の作品群へ。相模原在住ということで、楽園にも街にも神奈川っぽさが漂っている。
街シリーズの先には、天井まで届くような大作が続く。
大画面のどれもが、渦巻いてるって感じ。
巨大な絵の中に、無数の人間、動植物、大地、海、川、宇宙。それは小さな細い筆で描かれている。
出口まで見て、もう一度最初に戻って見ていたら、遠藤彰子さんご本人が私の前で人と話していた。
話が終わって歩いて来られたので、会釈をして「新潟から見に来ました」と言ったら、「まあまあ、遠くから。ここに掛けて話しましょう」と言われて、自分も美大は出てませんが絵を描いてますと言うと、「美大を出たとか関係ないですよ。とにかく続けること。毎年これに出品するとサイクルを決めてやることです」と励ましを頂いた。
本当に気さくに来館者と話していて、親しみやすいお人柄なのだが、渦を巻く巨大な絵の作者というよりは「面倒見のいい園長先生」のような雰囲気だった。
園長先生の描いた巨大な紙芝居を見ながら壮大な物語の世界に引き摺り込まれた園児たち。
平塚から帰りがけに汐留に立ち寄ったら、ビルとビルを繋ぐ空中の歩道の間を「ゆりかもめ」が走り、地上から地下へと層をなす光景が、「街シリーズ」そのものだった。